研究のまとめ

対話型電子白板が複数メーカから市販され,普及し始めている。これらの装置の利点は,従来から教員や生徒が慣れ親しんでいる黒板を利用した授業に,情報化によってもたらされる利点を融合できるというところにある。しかし,それらの装置を活用した教育アプリケーションが未発達で,その蓄積も少ない。極端な例として従来型の CAI をこの環境で利用しても,教員が主役の授業の情報化には役立たないからである。本研究開発は,教員や生徒が主役になって授業で使える教育ソフトウェアの研究開発を目標とした。また,これらを通してデザインガイドラインを作成した。さらに,本研究では技術的に先進的な教育ソフトウェアを実現してみせるという目標と同時に,教育実践者の教員とソフトウェアを作成する情報技術者,そして,教育工学者が連携することによりシナジー効果を期待し,スパイラル法により試作と評価を繰り返して,教育ソフトウェアの開発を行った。授業に使うソフトウェアとして先生方と何度も検討を繰り返し進めて行ったことで,これらの目標をある程度達成できたといえよう。時間的制限から評価実験は定量的な域には達していないが,生徒や先生の反応は当初の予想以上であった。提案を行い,プロトタイプを作成し,評価改善する過程を何度も繰り返し,インタラクションしながらの開発の進め方が成果につながったと思われる。当初は予定に入ってなかったそろばんの授業や,研究会での発表などの実践授業も行うことができて,予定以上の密度の濃いプロジェクトになった。第一小学校,教育委員会,ソフトウェア技術者,そして,東京農工大学の連携は有効に機能した。予定されていた実践授業スケジュール以外にも,今回のソフトウェアと電子白板を使った授業が積極的に行われ成果が把握しきれない程であった。また,子供たちから電子白板でこんなこともできるのでは,こんなことも使えるなどの話も出て,受身でないIT教育が進んでいるとの意見もでた。