検討内容

一斉授業の情報化手段として対話型電子白板を前提に,それにふさわしい教育ソフトウェアを試作して公開するとともに,その作成方法論を提案する。具体的には,次の教育ソフトウェアを例として作成する。

当該プロジェクトの成果目標(a)

      教師が板書をし,それを文字認識させることで清書できる「板書清書ソフトウェア」。なお,文字認識エンジンには研究室で既開発のものを利用する。当開発に利用可能な電子辞書があれば,各文字をマーカで指示すると書き方や読み方,類義語の情報を示すなどの新機能追加も可能である。

      理科実験に使用する器具(アルコールランプ,マッチ,フラスコなど)を対話型電子白板上で移動配置し,さらに指定部分をタップしアニメーションさせることで理科実験(10種類程度を想定)の擬似体験を生徒全員の前で,先生が(または生徒も)示すことができる「理科実験シミュレータ」。

      対話型電子白板上で,メニューから電池,抵抗,スイッチ,電球などを選んで回路を構成し,それに電流を流すことをシミュレーションして,キルヒホッフの法則などを教える理科「電気回路教育ソフトウェア」。説明をペンで書くこともできるようにする。

      手書きでは正確には描画できない正多角形を簡単に表示し,それに関して教育する算数「正多角形教育ソフトウェア」。

当該プロジェクトの成果目標 (b)

    学習漢字をモザイク表示し,それが何の漢字か分かった生徒が前に行って手書きで回答する国語「漢字筆記学習ソフトウェア」(以前に開発したものを評価して新規開発)。

    二人の生徒が,与えられた漢字を使って熟語を作る(筆記して認識させる)競争をする国語「熟語筆記回答対戦ソフトウェア」

    問題と3択の答えを生徒に選ばせて,正解,不正解に対して音とアニメーションが変化する「三択クイズソフトウェア」。問題については,あらかじめ準備したものだけでなく,先生が簡単に作成可能とする。生徒のレベルに応じた問題を用意し,学習のまとめのチェックなどに使用することが可能となる。

視線集中型で教師が主役となる教育ソフトウェアの作成方法論の検討

教材が説明するのを止めて,説明するのは教師であり教師が主役となる教育ソフトウェアを作成する。説明をどう付けるかを考えるより,説明を出来る限り取り除く方向で作成する。教材がストーリ仕立てで,使いたいところまで行くのに何分もかかるような作りは止めて,ストーリは先生が作る。ソフトウェアは,その材料を提供する。先生の自由度の高いソフトウェアとして,写真や手書きの資料などをスキャナやインターネットから取り込んでコンテンツの作成や追加が可能なソフトウェアとする。

生徒が回答する形式で必要な教育ソフトウェアの作成方法論の検討

インターネットで見つけた材料を電子白板に取り上げてペンで書き加えたりしながら皆で議論できるようにすることにより,先生からだけでなく級友から学び,またコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を養う効果など,個別学習にはない様々な利点がある。生徒が電子白板を操作して使用するため,機能を絞って簡単操作ができるようにする。操作者と視聴者が異なることから,どの操作がどういう結果をもたらしたかが分かるように作成する。

対話型電子白板を活用した教育ソフトウェアの作成方法論の検討

教育ソフトウェアは,教育者と学習者の二種類のユーザを対象にするので,要求仕様を定めることは難しい。要求仕様は,先生からだが,利用者は児童生徒であることから,使ってみないと予測できない副作用が発生する。現場の先生方は,プロトタイプを見ることで発想をかきたてられ,新たな提案をすることが多いので,これを大いに歓迎する。作成方法として作成・評価・改善を数回繰り返すことを前提にソフトウェア開発を行う。